ハーバードの美意識を磨く授業: AIにはつくりえない「価値」を生み出すに は

ハーバードの美意識を磨く授業: AIにはつくりえない「価値」を生み出すに は
著者 ポーリーン・ブラウン(Pauline Brown)
出版社 三笠書房
発売日 2021年 11月 26日(金)

推薦者:橋本 弘英

橋本 弘英

推薦者・橋本 弘英について

医療用医薬品の広告代理店でデジタル系のディレクターをしています。
BOOKカフェで、好きな作家の小説の蔵書を読み、食べる事が好きなので、レシピ本や、料理のコツが書かれている本、現地の料理を中心に書かれた紀行文なども好きです。
読書会では、自然科学系の本、自伝、エッセイ、自分を見つめ直す為の本などをシェアしています

おすすめポイント

私の祖母や叔母は、よく「あの人は、センスが良いね」と言っていました。
その「センスが良いね」と言われている人を見ると、子供の眼からみても、持っているモノ、着ている服、話す内容や立ち振る舞い、表現していることなど、確かに綺麗だな…かっこいいなと思えました。
この「センスが良い」って、何だろうと思っていたのですが、大人になってその人が持っているものは、「美意識」だと思いました。

そんな風にして「美意識」に興味を持ち、プロダクト製品・アーティストの作品・町並みや建築物・料理…多岐にわたる「綺麗なモノ」をできるだけ見たい・持ちたいと思っている私ですが、「美意識」の洗練された方に会うと、「美意識ってどうしたらもっと磨けるのかな」と思っていたところに、本屋さんでこの本に出会いました。

要約

初めに「なぜ美意識が求められているのか」について書いてあり、(マーケティングやブランドの育成に関わった著者が)成功しているブランド(スタバやアップル、ルイヴィトンなど多数)に関して、実例として、「哲学・美学(ブランドコード・ブランドストーリー)」について実例を交えて紹介しています。

また、著者やファッションアイコンになっている方がスタイルをつくる過程で、どのようなに美意識を磨いていったのかについてのヒントも書かれています。

P44
美意識をビジネスに生かしていくために、企業の幹部は自身の美的感性や価値観のみならず、 顧客の美的感性と波長を合わせなくてはならない。研究によれば、購入するかどうか意思決定 する際に、その八五パーセントを占めているのは、分析的思考ではなく感情や感覚だという。しかしながら、多くのマーケティング担当者は、残りの一五パーセントの部分、つまり製品の仕様 や機能性の評価にばかり注目している。

電化製品などのスペックは数値で表示され、比較検討ができます。どんどん新製品が出て、そのスペックが劣ってくると、市場的には、古いモノは売れなくなる傾向にあるといえます。
ですが、私は、モノを買うとき、(部屋に置いて)調和するか、かっこ良く使えるかで判断することが多いです。スペックで選んでしまうと、どんどん新しいものに買い換えたくなるからです。

ブランドの目指すところは「自分の感覚に合う」、「見た目が気に入った」と思ってもらい“長く愛してもらえるモノ”を作る(創る)という事だと思ったので、この部分はとても共感できました。

読後感

私が関わっている仕事は、WEBやアプリの内容ではありますが、モノを作る仕事という意味では、美意識は重要です。
「閲覧したくなる表現ができているか」「これは何か変だな」ということに気づけるかどうかが、仕事でも求められます。今まで、結構その部分でつまずいてきました。

そんな私にも「知的センスがある人が実践していること」の章には、参考になることが書かれていました。
『「波長を合わせる力」の生かし方』のページでは、周りや自分との調和させる力を磨く方法など、少し難しくてハードルは高いですが、まさに「磨く」ためのヒントがありました。
おそらく、1度読んだだけでは、理解・実践していくことは難しいですが、何度も何度も読んで、「美意識を磨く」努力をしていきたいと思いました。

また、自分がこれまでに置かれた環境、決定的に影響を受けたもの、文化的な背景が自分の選ぶモノに反映されるとも書いてありました。
友達が、「あ、それ良いな」と言うモノを選んだ時、「何でそれを選んだの?」と聞くようになりました。そうすると、その人の考え方や、これまでの思い出・経験を熱く語ってくれたりして、その人の「人となり」が垣間見られて、グッと距離が縮まるという、意外な効果もありました。

こんな人におすすめ

  • ビジネスパーソン(特にプロダクト系の会社)
  • 世の中の潮流を知りたい方
  • ブランドの成り立ちや、取り組みの事例、どう発展してきたかに興味がある方
  • 美意識を磨く為に「どう意識していけば良いか」知りたい方
  • AIには代替できない仕事について知りたいと考えている方